はじめに ― 熊駆除をめぐる“賛否の声”が広がる背景

近年、全国で熊の出没が相次ぎ、被害が深刻化しています。秋田や北海道では人身被害も発生し、自治体が「駆除」を決断せざるを得ない状況が増えています。一方で、「熊にも生きる権利がある」「人間が山を荒らしたのでは」という声もSNSを中心に広がっています。
中でも注目されているのが、芸能人による「熊の駆除反対」や「共生の必要性」を訴える発言です。影響力のある著名人が発する言葉は、社会的な議論を呼び起こし、人々に“命の扱い方”を問い直すきっかけを与えています。この記事では、実際に熊の駆除について言及した芸能人と、その背景にある思想や社会の反応を解説します。

「熊駆除に反対?」熊の駆除に言及した芸能人一覧

以下は、熊の駆除に対して意見を表明した、または共生の必要性を訴えた芸能人の一覧です。報道・SNS・インタビューなどをもとに整理しています。

芸能人名 職業 主な発言・活動内容 熊駆除への立場・関連性
デヴィ夫人 タレント 人身被害が続く中でも「クマを麻酔銃で捕獲し、山に帰してあげます」と発言。命を奪うよりも“共生”を重視する姿勢を示した。 駆除反対・共生賛成の立場を明確にしている。
宇多田ヒカル 歌手 SNS上で動物保護・自然保護への意識を発信。人間の生活拡大が動物の居場所を奪っていると警鐘。 直接的な駆除反対発言ではないが、思想的に近い立場。
渡辺謙 俳優 環境保護イベントに参加し「自然と人間の共存」をテーマに発信。 駆除の是非に関しては中立的だが、共生を重視する姿勢。
恵俊彰 タレント(ホンジャマカ) 2021年6月18日放送『ひるおび!』で札幌の駆除されたヒグマについて「結果的にはちょっとかわいそう」と発言。被害者への同情も示した。 駆除に一定の理解を示しつつも、命を奪うことへの葛藤を述べた中間的立場。

この表からわかるように、「熊駆除反対」と明確に表明した芸能人は多くありません。しかし、デヴィ夫人のように“命を救う方法を模索すべき”と訴える声は、社会的にも注目を集めています。

デヴィ夫人が語る「熊を山に返すべき理由」

タレントのデヴィ夫人が、全国で相次ぐクマ被害をめぐり、「日本もアメリカのように、麻酔銃で捕まえて山に帰すべき」と発言し、注目を集めています。夫人は自身のインスタグラムで、

「日本では銃殺してしまう。可哀想です。アメリカでは、クマを麻酔銃で捕獲し、果物などの食物をつけて山に帰してあげます。日本もアメリカに習うべきではないでしょうか」

と綴り、クマの命を奪う以外の解決策を模索すべきだと訴えました。

近年、日本各地でクマによる人身被害が急増しています。国の統計によると、被害件数は過去最多を更新し、特に東北や北陸地方で深刻化しています。秋田県美郷町では、作業小屋に立てこもった3頭のクマが駆除された出来事をきっかけに、全国から「殺すしかなかったのか」といった批判や議論が巻き起こりました。

デヴィ夫人はこの一連の騒動を受け、

「普段は山奥にいるクマが、気候変動によるドングリの不作で食糧を求め、やむなく人里に降りてきている。人間との不意の出会いがおき、悲劇が起きてしまう。亡くなられた方々のことを思うと本当に痛ましいですが、原因の一部は人間の側にもあるのではないでしょうか」

と述べ、気候変動や環境の変化が人間の生活圏と野生動物の境界を曖昧にしている現状を指摘しました。

彼女は「人間が引き起こした環境変化の責任は人間が取るべき」との信念を掲げており、これまでも動物愛護や命の尊厳に関する発言を繰り返してきました。今回の主張にも、単なる感情論ではなく「共生」の哲学が通底しています。

ただし、麻酔銃を用いた捕獲や再放獣には、現実的な課題が多く存在します。麻酔の安全性や捕獲時のリスク、再び人里に戻る可能性、さらには地域住民の不安など、運用には高度な専門知識と行政体制の整備が欠かせません。専門家の間では、

「命を守るという理念は尊いが、安全と共生をどう両立させるかが課題だ」

といった意見も上がっています。

それでも、デヴィ夫人の発言が多くの支持を集めているのは、「命を守る姿勢」に共感する人が少なくないからでしょう。クマの被害対策をめぐる議論は、単なる「駆除か保護か」という二項対立を超え、「どうすれば被害を防ぎながら命を尊重できるか」を考える契機となっています。

宇多田ヒカルは、本当に「熊の駆除に反対」なのか?

2025年秋以降、宇多田ヒカルさんの名前が「熊の駆除問題」と結びつけて語られることが増えました。
きっかけは、ある週刊誌が SNS 上の“熊駆除反対”という強い意見を、あたかも彼女自身の発言であるかのように
配置した記事を掲載したことです。この構成によって、ネット上では「宇多田ヒカルは熊の駆除に反対らしい」という
誤解が急速に広まりました。

■ 本人は報道の「誤解」を強く否定

宇多田ヒカルさんは自身の X(旧 Twitter)で記事の構成に強い違和感を示し、誤った印象が広まっていることを批判しました。

本人の私でも騙されそうになったわ

関係ない有名人に世間の憤りを向けるのはやめてほしい

これらの反応から、宇多田さんは「熊の駆除に反対」というスタンスを取っているわけではなく、
あくまで誤解を生む報道手法に対して抗議していることが分かります。

■ 過去の発言から見える姿勢

クマ問題に関する彼女の直接的な発言は多くありませんが、報道などから次のような傾向が読み取れます。

  • クマは可愛い存在として親しまれる一方、野生では人間にとって危険にもなり得るという現実的な認識を持っていること。
  • 駆除以外の選択肢(捕獲して山に戻すなど)にも関心を示していたと報じられていること。
  • 楽曲『ぼくはくま』はキャラクター的表現であり、野生動物政策への政治的立場を示すものではないこと。

■ 結論:現時点で「駆除反対」と断定するのは不正確

事実を総合すると、次の点が明確になります。

  1. 宇多田ヒカルさんは「熊の駆除に反対」と明言していません。
  2. むしろ、そのように受け取られる報道を強く否定しています。
  3. これまでの姿勢は、感情論ではなく現実的な危険性と対策を理解したうえでのものです。

以上の点から、現時点で彼女を「熊の駆除反対派」と位置づけるのは不適切であり、誤ったレッテル貼りにつながる可能性があります。
今後、本人が明確な意見を表明しない限り、慎重な情報の扱いが求められます。

ホンジャマカ「恵俊彰」:駆除された熊を「かわいそう」と表現

2021年6月18日放送の『ひるおび!』で、MCの恵俊彰は札幌市内に出没し4人に重軽傷を負わせた末に駆除されたヒグマについて

「結果的にはちょっとかわいそう」

と発言した。

市街地に現れた以上、駆除は避けられなかったのではとしつつも、命が奪われたことへの複雑な思いを示した形だ。しかしこの発言に対し、ネット上では「人を襲った熊に同情するのはおかしい」「怪我人が出ているのに軽率だ」と疑問の声が相次いだ。

専門家からも再び人を襲う危険性が指摘されていたこともあり、恵の言葉が駆除反対派を刺激するとの懸念も寄せられた。一方、札幌市の公式発信には対応を支持する声が多く集まっていた。

熊駆除に賛成する芸能人

近年、熊による人身被害が増加する中で、熊駆除の必要性について意見を述べる芸能人が注目されています。特に松山ケンイチさんと野口健さんは、具体的な経験や視点から賛成意見を示しています。

松山ケンイチ

俳優の松山ケンイチさんは猟の資格を持ち、実際に有害駆除に関わった経験を公表しています。自身のSNSでは熊を捕獲したことを報告し、現場の状況を隠さず伝える姿勢を見せています。松山さんは、野生動物と人間の共存を理想としながらも、人里に出没する熊が重大な危険をもたらす現状では、住民の安全を守るために駆除が必要となる場合があると述べています。

野口健

アルピニストの野口健さんも熊駆除に理解を示しています。登山を通して自然と向き合ってきた立場から、近年増加する人身被害は見過ごせないと指摘し、「人命を優先するのは当然です」と明言しています。また、やむを得ず駆除した熊の命を無駄にしないため、肉や毛皮の活用を提案するなど、倫理的な配慮を伴う駆除の在り方を訴えています。

まとめ

お二人に共通するのは、熊の命を軽視して駆除を肯定するのではなく、人命を守るという現実的な課題と、自然への敬意を両立させようとする姿勢です。

芸能人発言に対する社会の反応

SNSやニュースサイトでは、「熊を殺すのは可哀想」「現場の人の苦労もわかってほしい」といった両極の意見が交錯しています。
芸能人の発言は影響力がある一方で、現場を知らないという批判も受けやすいのが現実です。
特に地方では、農作物被害や通学路の安全問題が切実であり、「理想論では解決しない」との意見も多く見られます。

それでも、デヴィ夫人のような著名人の言葉が“問題提起”として機能していることは確かです。
彼女の発言によって、「殺すこと以外に選択肢はないのか」「人間が自然にどう向き合うべきか」という議論が広がりました。

私たちが今できること

熊駆除問題は「自然と人間の共存」という根本的なテーマを含んでいます。
まず私たちがすべきことは、熊の生態や出没要因を正しく理解することです。環境省や自治体の公式情報を確認し、感情ではなく事実に基づいた意見形成を行いましょう。

次に、地域での安全対策や環境保全活動に関心を持つこと。SNSでの意見発信だけでなく、地域の声を知る姿勢が求められます。
最後に、芸能人の発言を「一つの視点」として捉えることです。誰かの言葉に同調するだけでなく、自分自身の考えを磨くことが、真の“共生”につながります。

まとめ ― 「熊を守る」だけでなく「人を守る」視点も

「熊 駆除 反対 芸能人 誰」という疑問は、単なる好奇心ではなく、“命のあり方”を問う社会的テーマです。
デヴィ夫人をはじめとする芸能人の発言は、人々に「命を奪う前にできることはないか」という視点を投げかけています。
一方で、現場の安全確保も忘れてはなりません。熊も人も共に生きるために、冷静な議論と具体的な行動が必要です。
感情だけでなく、データと対話を基盤にした「共生社会」をどう築くか。今こそ、私たち一人ひとりが考えるときです。

参考資料