はじめに:石破 なぜ辞めないのか?
2025年7月の参議院選挙で自民党が過半数を失い、石破茂首相の責任を問う声が高まっています。支持率は20%台前半にまで低下し、党内外から「退陣すべき」との声も上がる中、石破首相は辞任を拒否しています。
「なぜ辞めないのか?」という疑問に答えるには、単なる執着や意地ではなく、複数の構造的・政治的・心理的要因を丁寧に読み解く必要があります。本稿ではその理由を5つに分けて詳しく解説します。
第1章:石破茂首相とは何者か?
石破茂氏は、防衛・農政・防災などの分野で閣僚経験を積み、「政策通」として長く注目されてきた自民党のベテラン政治家です。過去には5回総裁選に挑戦し、2024年についに首相の座を獲得しました。
就任後は、台風被害への対応や物価高騰への対策に追われつつも、防衛費増額や日米韓連携強化など、安全保障政策において積極的にリーダーシップを発揮してきました。
第2章:辞任すべきとの声と世論の現状
石破政権に対する批判の声は強まり、世論調査では内閣支持率が20.8%、不支持率が55.1%に達しています
地方組織の動き
- 栃木県連、山口県連、愛媛県連などが退陣要求の決議を採択
(朝日新聞) - 若手議員からも「世代交代」や「再出発を」との声が増加
また、石破首相が新人議員15人に商品券を配布したことが報道され、公私混同との批判も浴びています
(朝日新聞)。
第3章:辞任しない理由①~⑤(構造的要因の分析)
1. 国政の停滞を避けたいという責任感
石破首相は、「今、政権が混乱すれば日本全体が沈む」と明言し、政権の安定維持が最優先だと考えています。外交・安全保障や災害対応、インフレ抑制策など、多くの重要課題が進行中であり、この状況で辞任すれば国政に空白が生じると懸念しているのです。
この発言の背景には、過去の政権交代が国政の停滞を招いた経験があるからだと見られます。
2. 党内に「ポスト石破」と呼べる人材がいない
現時点で、自民党内に明確な後継者は見当たりません。岸田派はすでに分裂し、安倍派も不祥事で弱体化。世論人気がある河野太郎氏や小泉進次郎氏も、党内基盤が弱く、次の総裁選で勝てるとは限りません。
石破政権が立ち上げた「災害即応体制」や「インフレ対策本部」は、石破氏の主導力によって支えられており、交代すれば機能不全に陥る可能性もあります。
3. 外交・安全保障の要所で不可欠な存在
中国の軍拡、北朝鮮の挑発、台湾海峡の緊張など、東アジア情勢はかつてない緊迫感を持っています。石破氏は米国やASEAN諸国との関係構築を重視し、防衛費の増額や日米韓の連携強化を主導してきました
(Reuters Japan)。
こうした外交は「継続」が命であり、途中交代による政策の空白は国益を損なう恐れがあります。そのため、政権内では「少なくともG20やASEAN首脳会談が終わるまでは続投を」という意見が優勢です。
4. 一部退陣論はあるが、党内統制は依然として維持
確かに地方から退陣を求める声は出ており、若手議員の中にも批判的な声が見られます
(KHB東日本放送)。
しかし石破首相は、幹事長や官房長官などの人事を通じて主流派を押さえ、党内での統制を維持しています。
岸田政権末期のような「派閥の大量離反」や「造反劇」は見られず、現時点ではクーデターのような動きに発展する兆しはありません。
5. 総裁ポストへの執念と「辞めたくない」という強い動機
石破氏は過去5回総裁選に挑戦し、2024年に念願の総裁・首相就任を果たしました。このポストに対する執念は強く、「ここで辞めたら、もう二度とチャンスはない」という心理的なハードルもあります。
記者会見では「一度与えられた責任は最後まで全うする」と明言しており、辞任に対する拒絶反応は、個人の信念や未練とも深く結びついています。
第4章:今後の展望と読者ができること
想定されるシナリオ
- 年内辞任 → 総裁選を経て新体制へ
- 最小限与党で政権維持(国民民主・維新との連携)
- 解散総選挙で信を問う可能性
読者にできること
- 政治家の発言・行動を冷静に確認する
- SNSの噂ではなく、一次情報(会見・資料)を基に判断する
- 次の選挙で意思表示する
まとめ:石破 なぜ辞めないのか?
石破首相が辞任を拒む理由は、「国政の停滞回避」「外交安保の継続」「後継不在」「党内統制の確保」、そして「個人的執念」という、複雑な構造的要因に基づいています。国民の不満や退陣論は理解できますが、政治の現場では単純な善悪や意志だけでは動かない現実もあります。
「なぜ辞めないのか」という問いを通じて、私たちは政治家の責任、リーダーシップの在り方、そして次の選択肢について考える機会とすべきでしょう。