はじめに

プロ野球界において、山本由伸 投手のトレーニングが「異次元すぎる」と称されることがあります。しかし、この表現は果たして実態を正確に示しているのでしょうか。結論から言えば、「まったくの誇張ではないものの、“異次元”という言葉が示すほど常識を超えた存在かというと、少し補足が必要です」。彼の練習法には確かに他選手とは異なる方向性があり、そこには「可動域・身体操作・投球動作に直結する機能向上」という明確な意図があります。この記事では、(1)何が異次元と言われるのか、(2)そのトレーニング内容・背景、(3)あなた自身が取り入れられる再現プラン、の三段構成で解説します。

結論 — 「異次元すぎる」は本当か?

視点 実情 補足
① ウエイト中心ではない 山本投手は典型的な筋肥大を目的としたウエイトトレーニングを行っていないと取材で語っています。(Tarzan Web) 「ウエイトを全くしない」というより「筋肥大型の重負荷鍛錬を主軸にしない」という意味合い。
② 可動域・身体操作を重視 「BCエクササイズ」と呼ばれる身体の連動性・重心制御を鍛える手法を取り入れています。(Tarzan Web) 具体的には、ブリッジ・モビリティ・やり投げ型ドリルなど。
③ 投球動作への直結性 槍投げ動作を模したトレーニングで、投球における身体の“つながり”を磨いています。(First Pitch) したがって「異次元」と表現される要因は、単に負荷がすごいというより“方向性が革新的”という点にあります。

つまり、一般的なプロ野球投手のトレーニング像(重いバーベルを上げて筋量を増やす)とは明確に異なるため「異次元」の印象を与えていますが、それは「全く常識外」というより「常識とは違う選択をしている」という意味で理解すると適切です。

【動画】山本由伸のトレーニング、効果のあるなし以前に『できない』

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山本由伸のトレーニング“中身”を分解

1) ウエイト中心ではない

山本選手は、雑誌取材において「自分のトレーニングは筋肥大を目的としたウエイトトレーニングではなく、人間本来の身体機能を高めるものだ」と語っています。(Tarzan Web) 具体的には、「立つ・動く・重心を整える」ような基礎動作から始まり、肩肘の張りを軽減するためにフォーム改造を行ったという背景があります。たとえば「肘の張りが取れない」という問題を機に体の使い方を根本から見直したとのこと。(Tarzan Web) このような観点から、彼のトレーニングは“負荷至上主義”ではなく“動き・使い方至上主義”という特徴があります。読者の皆さんも「量より質・使い方を改善する」という視点をもつことが、まず第一歩です。

2) よく報じられる具体メニュー

種類 メニュー内容 効果・目的
ブリッジ系(ローリングブリッジ等) 背面を丸めずに腰を反らせて身体を“橋”にする動作。(多芸無才ブログ) 肩甲骨・胸郭・股関節の連動性を強化し、投球時の力の伝達効率を高める。
やり投げ/器具「FLECHA」使用スロー 槍を投げるような軌道・身体の使い方を練習。(Giants Fun Club) 脚→体幹→腕の連動を自然に学び、肩肘にかかる負荷を分散させながら強い球を投げられる身体を構築。
モビリティ・肩甲帯・体幹安定 動的ストレッチ・チューブ・片足バランス等。(カラダシボリ) 可動域を確保し、ケガのリスクを軽減しながら効率良く力を出せるカラダをつくる。

3) トレーニング哲学(Why)

山本選手が採用する哲学は、大きく次の三点に集約できます。

  • 「身体の中心=重心」から動かす意識:彼は「まず真っ直ぐ立つ」「重心を整える」ことから始めたと語っています。(Tarzan Web)
  • 「無駄な力を使わず、つながった力を出す」こと:脚・体幹・肩・手先が一本の釣竿のように作用する投げ方を習得するためのトレーニング。(Tarzan Web)
  • 「機能優先/筋量後」という順序:筋量を追い求める前に、まず身体の使い方・軸・可動域を整えることを選択しているという点。(デイリー新潮)

この哲学はプロ野球選手だけでなく、一般アスリートや野球少年・中級者にも応用可能です。筋量ばかりを追う前に「身体の使い方」を見直そうというメッセージとして、非常に示唆的です。

なぜ“異次元”と感じられるのか(科学的な見方)

投球パフォーマンスに影響する要素(力伝達・回旋・可動域)

投球時のエネルギーの流れを簡潔に整理すると以下の通りです:脚(地面反力)→体幹(回旋・重心移動)→肩甲帯→腕・ボール。ブリッジや可動域向上トレーニングによって、体幹から肩への連動をスムーズにし、腕だけで投げるのではなく「身体全体で投げる」意識が強まります。(多芸無才ブログ) また、やり投げ型ドリルでは“胸を倒して投げる”という動きがキーポイントとされ、腕だけで投げる習慣を改め、身体の軸を利用するフォームを養成します。(First Pitch)
このような身体操作と投球動作の融合が、観測される球速・制球・耐久性の向上に寄与しており、その結果として「異次元に見える」トレーニングになっていると考えられます。
ただし重要なのは、「重さ・量」が異次元なのではなく、「質・方向性」が異次元であるという点です。

あなたが“山本由伸式”を安全に取り入れるためにすべきこと

注意点(最初に必ず守ること)

まず、肩・肘・腰に既往症がある人は、専門トレーナーや医師に相談してください。
次に、「目的を明確にする」こと。例えば、「肩の可動域を広げたい」「投げる際に疲れにくくなりたい」など。
そして、フォームが崩れた状態で高負荷をかけることはケガの原因になります。まずは“使い方”を整えることを優先しましょう。

初心者向け:週3回・4週の再現プラン

ウォームアップ(10 分) メイン (30 分) 投擲/フォーム練習(10〜15分) クールダウン(10分)
1〜4週 動的ストレッチ(股関節・肩) ブリッジ3セット×8・プランク3×30秒・肩甲骨壁スライド3×10 メディシンボール投げ30球(フォーム重視) 静的ストレッチ(肩甲帯・ハム)
進行形 負荷を少し増(回数+2) フォームを意識して動き速度を少し上げる 距離を少し延ばす 可動域を確認して終える

このプランのポイントは「負荷を急激に増やさない」「フォームを崩さない」こと。また、週ごとに自身の可動域や疲労度を記録して、改善を実感しましょう。

中級者/競技者向け(進化版)

  • やり投げ型器具(「FLECHA」等)を取り入れ、脚・体幹・肩の連動ドリルを実施。 (Giants Fun Club)
  • 片足バランス・スラックライン等を利用し、安定性・バランス感覚を鍛える。
  • 週1回、専門トレーナーによるフォームチェックを受け、ウエイトを“機能的パワー系”に限定。

この段階では「量」よりも「質」「連動」「反復」が鍵になります。

よくある誤解(Q&A形式)

Q1:山本由伸は一切筋トレをしないの?

A1:厳密には「筋肥大を目的とした高負荷ウエイトトレーニングは行っていない」と取材で語られています。(Tarzan Web)
しかし、自重トレーニングや機能的負荷(例えば体幹・可動域を鍛える)をまったく行っていない訳ではありません。

Q2:一般人が真似しても意味あるの?

A2:はい。可動域を広げ、身体の連動性を鍛えるという観点は、野球をしている人・肩肘に不安を抱える人、さらには日常動作の改善を目指す人にも有効です。ただし、専門機器・投手専用ドリルを公私にわたって真似する場合は、段階を踏んで無理せず進める必要があります。

Q3:器具(FLECHAなど)を導入すべき?

A3:器具を使うことで投球動作に近い身体連動ドリルを行いやすくなりますが、必須ではありません。メディシンボール・タオル・既存の設備でも代替可能です。重要なのはその「目的=脚から体幹へ、体幹から腕へつながる動き」を理解することです。(First Pitch)

まとめ+取り掛かるべきこと

改めて結論を整理します。山本由伸選手のトレーニングは、“異次元”と言われるほどの革新性を持っていますが、それは「量・重さ」よりも「身体をどう使うか/動きをいかに効率化するか」に主眼を置いたものです。ゆえに、読者の皆さんがまず取り掛かるべきことは以下の通りです:

  • 身体の使い方・重心・可動域のチェックから始める。
  • まずは週3回・4週間程度の再現プランを実践し、フォーム・可動域・疲労感を記録する。
  • 安定を感じたら、中級者・競技者向けのドリル・器具導入を検討する。
  • 無理をせず、専門家(トレーナー・理学療法士)にフォームを確認してもらう。

この手順を踏めば、「山本由伸 トレーニング メニュー が異次元すぎる」という言説に対して、ただ憧れるだけでなく、“自分の動き”に応用できる現実的な戦略とすることが可能です。ぜひまず一歩、身体の動きに注意を向けてみてください。

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