はじめに
この「スシロー 醤油ぺろぺろ事件」は、2023年1月に岐阜県内の店舗で、来店した少年が醤油ボトルや湯呑みを舐め、さらにレーン上の寿司に自身の唾液を付着させた動画が拡散された騒動です。スシロー運営会社は当初、約 6,700万円 の損害賠償を請求しましたが、2023年7月末には調停が成立し訴訟が取り下げられました。賠償金の支払実態や当事者の現況は公には明かされておらず、憶測も交えながらも、事件の流れと現在をできる限り整理します。本稿を読むことで、「何が争点だったか」「なぜ訴訟が和解になったか」「当事者は今どうしているか」をクリアに理解できます。
事件概要 — 醤油ぺろぺろとは何だったか
この事件は、2023年1月3日、岐阜県岐阜市内のスシロー正木店で発生したと報道されています。来店した少年が、卓上の醤油ボトル注ぎ口を舐め、別の湯呑みを取って縁を舐めてから元の位置に戻し、更にはその指で回転寿司のネタに触れるといった一連の行為を撮影した動画が拡散され、大きな炎上を引き起こしました。動画は30〜50秒程度とされ、撮影者と思われる同行者による音声(「えっ、キモっ」など)も含まれていました。スシロー運営側は、この行為を“衛生リスク・風評リスクの極めて高い悪質事案”と受け止め、直ちに調査と対応を表明しました。複数のメディアが映像内容を報じ、SNS上でも「飲食店で絶対してはいけない行為」として批判が殺到しました。
法的対応と訴訟の流れ
スシロー側の民事・刑事対応
事件発覚後、スシロー運営会社「あきんどスシロー」は、刑事処分と民事訴訟の双方で対応する方針を明らかにしました。警察には被害届を提出し、器物損壊・業務妨害などの可能性を視野に捜査を促したとされます。民事面では、2023年3月に大阪地方裁判所へ約6,700万円の損害賠償を請求する訴訟を提起し、店舗での清掃・ボトル交換・風評被害・営業減少などを損害項目として主張しました。株価下落や顧客離れなどを含む企業損失を根拠に訴えを構成しています。ただし、具体的な算出根拠や請求根拠には反論の余地があり、訴訟過程では争点となりました。スシロー側が請求金額を高く設定した背景には、抑止力・警告効果を見込んだ戦略的判断があったとの指摘もあります。
争点・少年側の主張
少年側(被告)および代理人は、迷惑行為自体は認めつつも、損害額との因果関係を争点としました。具体的には、客足減少や株価下落をすべて行為と結びつけるには無理がある、競合店の影響や市場環境変化など他因も考慮すべきと主張しました。拡散責任・被告の予見可能性の範囲なども争点になったと見られます。また、動画拡散に至った原因や拡散者の特定、被告の関与度合いが争われる可能性が報じられています。少年が高校を自主退学せざるを得なかったという報道も見られ、社会的・心理的影響も争点のひとつとなりました。
調停成立と訴訟取り下げ
2023年7月31日、報道によれば大阪地方裁判所において調停が成立し、スシロー側は訴訟を取り下げました(=実質的な訴訟終了)。スシローは「少年側の責任を認め、納得のいく内容で和解した」としており、具体的な和解条件・金額は非公開とされています。仮に調停の合意内容が秘密保持されていれば、外部には賠償金の実支払い額や支払条件などは明らかになっていません。また、弁護士もこの和解を「迅速な解決」「抑止効果を社外向けに示す意味合いがある」と評価した報道があります。これによって、訴訟段階に比して争点を深追いせず、企業リスクを抑える判断がなされた可能性が高いと考えられます。
賠償請求額と支払実態
請求された6,700万円の内訳と根拠
スシロー側が訴訟で請求した6,700万円には、店舗での清掃・ボトル交換・湯呑み廃棄コスト、営業損失、風評被害、株価下落による企業価値減少などを含むと報じられています。この請求額は、被害額を最大限含めた“上限想定”としての戦略的な訴額と見る向きもあり、裁判所がその全額を認めるわけではないとの見方が一般的です。実際、こうした風評被害や株価下落までを賠償対象と認めさせるのは立証が難しいと法務解説で指摘されています。
実際に支払われたのか?未公表点と憶測
調停成立後、スシロー側は訴訟取り下げを公表しましたが、実際にどの程度支払われたか は公開されていません。和解契約が秘密保持条項を含む可能性も高く、外部からは支払額・支払方法・支払時期などが不明です。一部報道では「責任は認められた」とのコメントもありますが、それが金銭支払いを意味するかは明言されていません。そのため、賠償金の“実額”は憶測の域を出ず、多くの人が「全額支払われた」と断定できないというのが実情です。
当事者の現在 — 少年とその家族のその後
地元住民の証言によれば、事件後、少年およびその家族は極端に人目を避けた生活を送っているようです。「ずっと家にいる」「外出をほとんどしない」との証言が報じられています。母親も疲弊した様子が語られ、事件前の近隣での評判とは反対の印象が伝えられています。報道では、少年が高校を自主退学したとの見方もありますが、確実な確認情報は出ていません。家庭裁判所での処分については、器物損壊などの疑いで家裁送致された可能性が報じられていますが、処分内容は非公表とされています。従って、現在の正確な状況は「報道ベースでの情報しかない」という点を前提に読む必要があります。
類似事例と法的リスクの比較
他の飲食店迷惑動画事例から学ぶ
飲食業界では“バカッター行為”として過去にも複数の動画炎上事例があります。例えば、蕎麦屋従業員が不衛生な画像をツイートして店主側から1,385万円請求、被告が130万円程度で和解した例も報道されています。また、くら寿司で醤油差しを舐めた動画投稿者が威力業務妨害で立件された例もあります。こうした事例の傾向を見ると、請求額と和解額との乖離、訴訟を起こす・落としどころを探すという判断、風評被害主張の立証困難性など共通の構図がうかがえます。
投稿者が負い得る法的責任
当該投稿者は、行為および拡散に関して複数の法的責任を問われ得ます。例えば威力業務妨害罪や器物損壊罪が刑事責任として検討され得ます。また、民事上は不法行為責任(損害賠償)が主張され、損害・因果関係・過失・予見可能性が争点となります。特に風評被害・営業損失・株価下落を請求する際には、原告側が厳格な立証を求められ、裁判所で大幅な減額になる例も少なくありません。さらに、未成年者の場合は親権者・監督義務者責任論も絡み、親が賠償義務を問われる可能性も議論されます。しかしながら、実際には示談・調停で落としどころを探るケースが多く、全面的に裁判で争う例は稀です。
まとめ(結論・今後の注目点)
「スシロー 醤油ぺろぺろ事件」は、激しい炎上と高額請求という構図を伴った高度に象徴的なケースですが、最終的には調停成立・訴訟取り下げで終結しました。賠償請求額6,700万円は報道された通りですが、実際にどの程度支払われたかは公開されておらず、憶測の域を出ません。少年と家族は地元で人目を避ける生活を送っているとの証言が散見されますが、確定情報は乏しい状況です。他方、同様の迷惑動画事例から見ると、訴訟では請求額と認定額の乖離が大きく、示談・和解で処理されるケースが多いという傾向があります。今後は、こうした “迷惑動画” に対する業界側対応、SNSプラットフォーム規制、飲食店の防止対策強化などが注目点となるでしょう。
表:請求・和解に関する報道比較
項目 | 報道内容 | 出典 |
---|---|---|
請求額 | 約6,700万円 | Inshokuten/Kobe 弁護士ドットコム |
訴訟取り下げ | 調停成立をもって取り下げ | Inshokuten/スポニチ |
支払実態 | 非公表/不明 | Inshokuten/スポニチ |
当事者の生活 | 地元住民「家から出ない」等の証言 | 女性自身 |
参考文献(現在有効な情報元)
- “スシロー ペロペロ少年 6700 万円訴訟取り下げ 父親が涙ながらに語っていた「反省」” — NEWS ポストセブン
- “回転寿司店での迷惑行為、炎上後の現在は? 『スシロー』は調停成立” — Inshokuten
- “スシロー 醤油さし舐め事件の民事裁判、調停成立により終結!” — Kobe 弁護士ドットコム
- “スシロー“ペロペロ少年”自宅で反省の日々…6700万円の損害賠償” — 週刊文春/bunshun.jp
- “回転寿司チェーン最大手のスシロー/迷惑動画対応と法的処理” — Bengo4 法律ニュース
- “スシロー“ペロペロ少年”への 6700 万円請求取り下げ 弁護士のコメント” — スポニチ