はじめに
最近、くら寿司山形南館店で「迷惑行為」を映した動画が拡散し、制服姿の女子高校生が実行者として「特定」されている可能性がネット上で議論されています。
しかし、顔写真や実名をインターネット上で公開する行為は、名誉毀損のリスクを孕んでおり、誤特定や風評被害の可能性も無視できません。
本記事では、現時点で公表されている事実関係、法的視点からのリスク、誤情報を見抜くポイント、さらには晒された側・誤特定された側がとるべき対応を具体的に解説します。
この記事を読むことで、(1)実際何が起こっているか、(2)顔写真・実名公表が法的に問題となるか、(3)自分や知人が晒された場合にどう動くべきかが理解できるようになります。
事件概要と経緯
くら寿司山形南館店において、制服姿の女子高生と見られる人物が、レーン上の寿司を素手で触ったり、醤油差しを口に当てるなどの迷惑行為が動画で拡散されました。
(J-CASTニュース)
この動画はSNSを通じて瞬く間に広まり、炎上状態となります。拡散者・通報者が情報収集を進め、「実行者特定」の動きがネット上で活発化しました。
くら寿司側は2025年10月14日、公式声明を出し、「実行者はすでに特定しており、地元警察に相談しながら対応を進める」と表明しています。
店舗商品はすべて入れ替え、備品の消毒強化と交換を実施したとの記述もあり、企業として対応の真剣さを示す姿勢を見せています。
高校生特定の実態と疑義点
まず、流布されている顔写真・実名・高校名などの情報は、必ずしも信頼できるものとは限りません。匿名掲示板やSNS拡散者から出た“情報”が二次拡散されている可能性があります。
信憑性を検証するにあたっては、制服のデザイン・校章・背景の建物や時間帯など、複数の要素を照合すべきです。例えば、制服の仕様と噂される学校の制服が一致しない、撮影時刻と行動時間に食い違いがあるなど、矛盾点があれば「誤特定」の可能性が強まります。
また、誤って無関係な人物が晒されてしまう風評被害も過去に多数報告されており、拡散後に取り下げ・訂正されても完全には記録が消えないリスクがあります。
法的リスクと弁護士の見解
今回の件に関しては、弁護士による明確な見解も公表されています。
【くら寿司】弁護士が意見。寿司ペロ女子高生が顔や本名を晒され名誉毀損で訴える可能性(YouTube) によると、以下のような重要な論点が指摘されています。
弁護士の指摘ポイント
- 晒し行為そのものが名誉毀損に該当する可能性: たとえ女子高生が迷惑行為の実行者本人であっても、SNS上で顔写真・名前・学校名などを投稿する行為は「社会的評価を低下させる行為」にあたり、名誉毀損が成立する可能性がある。
- 拡散・転載も法的責任を問われる: 投稿やリポストに加担しただけでも、名誉毀損やプライバシー侵害の責任を問われる可能性がある。
- 誤特定の場合は確実に違法: もし晒された人物が実際の迷惑行為者と異なる場合、虚偽情報の拡散として名誉毀損が明確に成立する。
- 「真実であると信じた合理的理由」が必要: SNS情報をそのまま引用するだけでは、この要件を満たさないため免責は難しい。
弁護士は「SNSで見たから信じた」では責任を免れないと強調しており、特定情報を発信・拡散する前に、根拠を慎重に精査する必要があります。
また、「晒した側が訴えられる」可能性が十分にあるという点も、多くの視聴者に警鐘を鳴らしています。
被晒・誤特定された場合にすべきこと
被害を受けた、または誤って晒された可能性がある場合、以下の順序で行動することが推奨されます:
行動ステップ
- 証拠保全: スクリーンショット、投稿のURL、拡散履歴、タイムスタンプを保存。紙媒体・電子媒体両方で証拠化する。
- 削除依頼・通報: 該当SNSの「報告」「違反申請」機能を使って削除を依頼。プラットフォーム運営者に対して法的根拠を明示して申請。
- 抗議文送付・サイト運営者への通知: 投稿者やサイト運営者に対して、名誉毀損の恐れを記した抗議文を送付し、削除または訂正を求める。
- 弁護士相談: 専門家に相談し、内容証明郵便や仮処分申請、損害賠償請求の可否を判断してもらう。
- 拡散抑制措置: 拡散が続いている場合、SNS拡散阻止の呼びかけ、拡散防止協力を得る手段を検討する。
過去の類似事件と教訓
事例 | 請求額/主張内容 | 実支払・和解額 |
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スシロー 醤油舐め事件 | 約6,700万円請求 | 調停成立・訴訟取り下げ |
くら寿司(別事案) | 備品交換・消毒費用等主張 | 約57万円(裁判主張額) |
今後の見通し・注意点
くら寿司側は、警察と連携して対応を進めており、訴訟化する可能性があります。
一方で、女子高生側が「晒し行為による名誉毀損」として法的措置に踏み切る可能性も浮上しています。
社会的制裁と法的責任が重なった場合、SNS利用者一人ひとりに「発信の責任」が問われる時代になったといえるでしょう。
参考情報元
- くら寿司 迷惑行為で氏名・写真拡散…さらし行為は名誉毀損(弁護士ドットコムニュース)
- くら寿司、迷惑行為に声明 実行者は特定済みとコメント(J-CASTニュース)
- 【くら寿司】弁護士が意見。寿司ペロ女子高生が顔や本名を晒され名誉毀損で訴える可能性(YouTube)