はじめに:なぜ自民党は減税に踏み切らないのか?

物価上昇、実質賃金の低下、生活苦。こうした国民の苦境にもかかわらず、自民党が消費税減税に否定的な姿勢を続けていることに対して、多くの疑問と不満が噴出しています。本記事では、自民党が公に掲げている「建前」と、実際に政策を左右している可能性がある「本音」の両面からその理由を分析し、政治的背景を深掘りします。

■ 建前の理由①:「社会保障の財源確保」のため

自民党や財務省は、消費税を「社会保障の安定財源」と位置づけています。年金・医療・介護といった制度は高齢化社会を支える要であり、それを維持するためには安定した財源が必要とされます。消費税は景気変動に左右されにくく、長期的に安定した収入が見込めるため、制度存続のためには不可欠というのが政府の説明です。

制度名 消費税の使途(説明上)
年金 一部の基礎年金の財源
医療 高齢者医療制度など
介護 介護保険制度

しかし、この説明だけで減税を拒否し続けることには、納得できない人も多いのが実情です。

■ 本音の理由①:減税すると企業献金が減るから

消費税には「輸出還付金」という仕組みがあります。これは、輸出企業が国内で支払った消費税を国が還付する制度で、特にトヨタなどの大手輸出企業は莫大な還付を受けています。結果的に、消費税は「一般消費者から吸い上げたお金を大企業に戻す」仕組みになっています。

この構造を維持するため、大企業は自民党に企業献金を続け、消費税の維持・増税を歓迎する立場を取っています。自民党が減税を嫌がる背景には、こうした“政治的収入源”の確保という現実があります。

■ 建前の理由②:国の借金をこれ以上増やせないから

政府は「減税=税収減=財政悪化」と説明します。税収が減れば赤字国債の発行が増え、将来世代にツケを回すことになる。だから今は“我慢の時”というのが、財務省主導の緊縮財政論の基本構造です。

特に財政健全化を掲げる国際的な圧力もあり、プライマリーバランス(PB)黒字化を目指すという目標がある以上、減税には慎重な姿勢を取らざるを得ないというのが建前です。

■ 本音の理由②:減税して景気が良くなると過去の失敗がバレるから

実際には、減税によって消費が拡大し、税収が逆に増えることもあります。海外でもVAT(付加価値税)の減税が景気回復に寄与した例があり、日本でも類似の効果が期待できます。

しかし、これを実施して成果が出てしまうと、これまでの緊縮財政路線(増税・支出抑制)が「間違っていた」「国民を苦しめただけ」と批判されることになります。それを避けたいがために、あえて減税に踏み切らないという“保身”が見え隠れします。

■ 建前の理由③:給付金の方が即効性と公平性がある

政府は、減税よりも給付金方式を選好する傾向にあります。理由としては「ターゲット層を絞って迅速に支援できる」「低所得層にピンポイントで届く」などです。

また、政治家にとって「給付金」は選挙対策としても使いやすく、実施のたびに「〇〇内閣の功績」としてアピールできます。一方、減税は制度設計が複雑で、恩恵が見えにくいという欠点があるとされます。

■ 本音の理由③:財務省の顔色をうかがっているから

日本の政策決定において、財務省は圧倒的な影響力を持っています。税制改正、予算配分、人事、メディア対応すら掌握しているため、政治家は財務省と敵対するとキャリアに響きます。

実際、自民党内でも財務省に反旗を翻す議員は少なく、結果として財務省の意向に従う形で「消費税減税」は議論すらされなくなっています。これは、民主主義というよりも“官僚支配国家”といえる構造の問題です。

■ 国民ができる「するべきこと」

観点 するべきことの例
世論の形成 SNSや意見フォームで減税の声を可視化
選挙での判断 減税を掲げる政党・候補をしっかり確認
情報の共有 家族や知人と政策の本質を話し合う

おわりに

消費税減税をしない理由には「社会保障」や「財政健全化」といった建前がある一方で、「企業献金」や「財務省との関係」といった本音が見え隠れします。政治判断の背後には必ず利害関係があります。私たち一人ひとりが本音を見抜き、声をあげることが、社会を少しずつ変えていく力になります。

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