深田萌絵氏による“萩生田光一”への刑事告訴の受理と報道呼称の妥当性をめぐって
2025年6月12日、ITジャーナリストの深田萌絵氏が、自民党・萩生田光一衆議院議員に対する刑事告訴が受理されたと公表したことが波紋を広げている。これにより、SNSを中心に「萩生田光一容疑者」という呼称が拡散し始めたが、果たして法的にこの呼称は正当なのだろうか?
本稿では、深田氏の告訴内容とその受理の経緯、そして「容疑者」と呼ばれることの法的根拠と社会的側面を検証する。
“萩生田光一”への告訴の背景と受理の経緯
深田氏は2022年以降、自身が受けたとする名誉毀損や心理的威圧の被害についてSNS等で発信を続けていた。中でも萩生田氏による「名誉毀損で訴えるぞ」との発言を「脅迫的な言動」として問題視し、複数回にわたって法的措置の準備を進めていた。
そして2025年6月1日、東京都内の八王子警察署に刑事告訴を提出。同年6月12日、深田氏のYouTubeチャンネルにて告訴が正式に受理されたことが報告された。これにより、捜査機関による捜査が開始される段階に入った。
萩生田光一氏が「容疑者」と呼ばれるようになった経緯
深田萌絵さんが、元文部科学大臣の萩生田光一氏から「脅迫を受けた」として、
八王子警察署に告訴状を提出し、これが受理されました。
その際、深田さんはカメラの前で
「本日より萩生田光一を“萩生田光一容疑者”と呼びましょう」
と明言しました。
この発言を含む動画がSNSやネット上で拡散され、
多くの人の目に触れたことにより、ネット上を中心に
「萩生田光一容疑者」という呼称が広まる結果となりました。
“萩生田光一”への告訴の時系列の流れ
時期/日付 | 出来事 | 補足事項 |
---|---|---|
2022年頃~ | 深田氏、自身のSNSやYouTubeチャンネルで情報発信を開始 | 自身が受けたとする名誉毀損や心理的威圧の被害について、特定の企業や政治家(含む萩生田氏)の関与を示唆する形で主張を展開。経済安全保障や半導体技術に関する見解も発信。 |
時期不明(2022年以降) | 萩生田氏による「名誉毀損で訴えるぞ」発言(深田氏主張) | 深田氏が、自身の言論活動に対する萩生田氏からの「脅迫的言動」としてこの発言を問題視。この発言が、今回の刑事告訴の直接的な動機の一つとなる。 |
時期不明(複数回) | 深田氏、萩生田氏への被害届を警察に提出(いずれも不受理) | 警察が、内容が不明瞭、刑事事件と判断しにくい、民事上の争いと判断するなどの理由で、被害届の受理を拒否または保留したと深田氏は主張。 |
2025年5月末頃 | 深田氏、次期衆議院選挙で萩生田氏の対抗馬として出馬表明 | 選挙区での直接対決を示唆する動き。 |
2025年5月末頃(深田氏出馬表明後) | 萩生田氏側が深田氏を「名誉毀損」で刑事告訴(深田氏主張) | 深田氏が選挙出馬を表明したこのタイミングでの告訴に対し、深田氏は自身の選挙活動を妨害する意図があると問題視している。告訴内容は名誉毀損であり、出馬そのものへの告訴ではない。 |
2025年6月1日 | 深田氏、東京都内の八王子警察署に萩生田光一氏に対する刑事告訴状を提出(初回は不受理) | 最初の提出時には、警察が告訴状を受理せず、持ち帰るように指示したと深田氏は主張。警察は内容の精査や追加情報の必要性を判断した可能性。 |
2025年6月1日~6月11日 | 深田氏と八王子警察署の間で告訴状に関する調整期間 | 提出された告訴状の内容について、深田氏側が警察からの指示に基づいて加筆修正を行ったり、追加の証拠を提出したりした可能性がある。 |
2025年6月12日 | 深田氏のYouTubeチャンネルにて、告訴が正式に受理されたことを報告 | 八王子警察署が告訴状を受理し、正式に刑事事件として立件し、捜査を開始する旨を深田氏側に通知したことを意味する。これにより、事件は捜査機関による本格的な捜査の段階へ移行。 |
2025年6月12日以降 | 八王子警察署による捜査の開始 | 警察は告訴状の内容に基づき、告訴人(深田氏)からの詳細な事情聴取、被告訴人(萩生田氏)からの任意聴取(または必要に応じて強制捜査)、関係者からの聞き込み、証拠品の分析などを本格的に開始。今後の進展次第で書類送検、検察による起訴・不起訴判断へと繋がる。 |
“萩生田光一”が告訴された内容
告訴状には、主に以下の2点の刑事責任が問われているとされる:
- 脅迫罪(刑法第222条)
- 名誉毀損罪(刑法第230条)
深田氏側は、これらの行為に関する証拠を収集したうえで弁護士を通じて告訴を行っており、警察も証拠関係を含めた捜査に着手したとみられている。
深田萌絵氏による「萩生田光一氏を容疑者と呼んでよい」とする主張について
深田萌絵氏は、自身が八王子警察署に提出した
萩生田光一氏に対する脅迫被害の告訴状が正式に受理された
ことを受け、同氏を「萩生田光一容疑者」と呼ぶことに対して正当性があると主張しています。
この主張の根拠として、深田氏は以下のような論理を提示しています:
- 刑事手続きにおいて、告訴状が受理された時点で、対象人物は「被疑者」としての地位を持つ。
- 日本の報道慣行では、「被疑者」に対して「容疑者」という表現を用いるのが一般的である。
- したがって、「告訴状が受理された=被疑者である」という前提のもと、報道スタイルに倣って「容疑者」と呼ぶことに論理的矛盾はない。
なお、この呼称の是非については、今後の捜査・司法手続きの進展により見解が分かれる可能性もありますが、
少なくとも深田氏は法的・報道的な慣例を踏まえたうえでの表現であると位置づけています。
「容疑者」呼称の法的位置づけ
● 刑事手続における「容疑者」とは?
日本の刑事手続では、「容疑者」という用語は正式には「被疑者(刑事訴訟法第47条ほか)」とされ、犯罪の嫌疑をかけられたうえで捜査機関から取り調べ等を受けている人物を指す。特にメディアでは、以下のような段階で「容疑者」と表記されることが一般的である。
- 逮捕された場合
- 書類送検(検察送致)が行われた場合
- 明確な嫌疑に基づく強制捜査が行われている場合
したがって、刑事告訴が受理された時点のみでは、法的に「容疑者」と認定されたとは言いがたい。
● 告訴受理=「容疑者」ではない
告訴が受理されたことは、警察が捜査に着手することを意味するものの、それはあくまで「事件」として受理されたにすぎず、告訴された人物が直ちに「容疑者」または「被疑者」となるわけではない。
このため、現時点で萩生田氏を「容疑者」と断定的に呼ぶことは、法的にも報道倫理上も問題がある可能性がある。
※ただし、深田氏の主張にも論理的な矛盾がない為「“萩生田光一”容疑者」という表現はグレーゾーンと言えます。しかし、名誉毀損などのリスクや社会的配慮も重要であり、その点においては賛否が分かれる部分もあります。
「“萩生田光一”容疑者」という内容のSNSでの反応と拡散
6月12日の深田氏の発表以降、SNSでは「萩生田光一容疑者」というハッシュタグがトレンド入りし、告訴受理をもって「容疑者化」と受け止めた投稿が相次いだ。
しかしながら、法曹関係者やメディア関係者の間では、以下のような慎重な見解も出ている:
「捜査機関が明示的に“被疑者”と位置づけた情報はまだない。現時点で『容疑者』呼称は不適切。」
このように、法的事実と世論の温度差が浮き彫りになっている。
名誉毀損のリスクと報道のあり方
誤って「容疑者」と断定的に報じたり投稿する行為は、当該人物の名誉を侵害する可能性がある。特に、政治家や公人であっても、刑事責任が確定するまでは無罪推定の原則が適用されるべきであり、慎重な表現が求められる。
SNS上であっても、個人を「容疑者」と呼称する行為が名誉毀損に問われる事例は少なくない。
過去の具体的な事例
過去には、以下のようなケースで名誉毀損が問題となり、実際に裁判で賠償命令が出たり、和解に至ったりしています。
- 誤報による逮捕報道: 警察発表に基づき逮捕された人物を「容疑者」として報道したものの、後に誤認逮捕や不起訴となり、報道機関が名誉毀損で訴えられたケースがあります。特に、実名報道された場合は、その後の社会生活への影響が甚大であるため、高額な賠償が認められる傾向にあります。
- SNS上での誤った情報拡散: 個人のSNSアカウントが、事件に関与していない人物を「犯人」や「容疑者」であるかのように断定的に投稿し、それが拡散されたことで名誉毀損が成立した事例が多数報告されています。特に、匿名での投稿であっても、発信者情報開示請求によって投稿者が特定され、賠償責任を負うケースが増えています。
- 公人・政治家に対する報道: 政治家や公人であっても、刑事責任が確定するまでは無罪推定の原則が適用されるべきです。たとえ疑惑が報じられていても、確定前の段階で「容疑者」と断定的に報じたり、有罪であるかのような印象を与える報道を行った場合、名誉毀損が成立する可能性があります。実際に、ある政治家がメディアの報道に対して名誉毀損訴訟を起こし、勝訴した例もあります。
報道機関や個人の注意点
これらの事例から、報道機関はもちろんのこと、私たち個人がSNS等で情報を発信する際にも、以下の点に細心の注意を払う必要があります。
- 無罪推定の原則: 刑事事件においては、有罪が確定するまで「推定無罪」の原則が適用されます。このため、逮捕されたり捜査対象になったりした段階では、あくまで「被疑者」や「~の疑いがある」といった慎重な表現を用いるべきです。
- 断定的な表現の回避: 確証がない情報に基づいて、特定の個人を「容疑者」「犯人」などと断定的に呼称することは、名誉毀損のリスクを非常に高めます。
- 情報の裏付け: 投稿する前に、情報の正確性を十分に確認することが重要です。特に、事件に関わる情報については、警察や司法機関からの公式発表など、信頼できる情報源に基づいているかを確認する必要があります。
今後の見通しと司法手続き
今後、捜査当局が事実関係を精査したうえで、
- 書類送検(検察への送致)
- 検察による起訴/不起訴の判断
といった正式な刑事手続に移行する可能性がある。その段階で初めて、萩生田氏は法的に「被疑者」と位置づけられ、報道機関も「容疑者」との呼称を使うことになる。
まとめ:「容疑者」という呼称の正確性を見極める冷静さが求められる
項目 | 内容 |
---|---|
告訴者 | 深田萌絵(ITジャーナリスト) |
被告訴人 | 萩生田光一(自民党衆議院議員) |
告訴内容 | 名誉毀損・脅迫 |
告訴受理日 | 2025年6月12日(八王子警察署) |
法的な「容疑者」か | 現時点では未確定(書類送検・逮捕の報道なし) |
SNSでの反応 | 「容疑者」呼称が急拡散、法的妥当性への疑義も広がる |
今後の展開 | 捜査→送検→起訴可能性あり、司法手続きの進展に注目 |
まとめ
今回の事案は、民間人による告訴が公的な人物の言動を問う契機となった点で注目に値する。しかし、現時点ではあくまでも「告訴が受理された」段階であり、「容疑者」と断定するには時期尚早である。
報道、SNSともに、表現の自由と名誉保護、そして法的事実の正確性のバランスが強く問われている。今後の捜査と司法の行方を冷静に見守る姿勢が求められる。
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八王子警察が告訴を受理し、「今日から萩生田光一容疑者」と拡散された内容
https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/tweet/1933042864625488364?detail=1
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深田萌絵氏が告訴受理を報告した動画(ライブストリーミング)
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X上での報道速報
八王子警察が告訴受理と報じた投稿
https://x.com/i/trending/1933065785963925669
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深田萌絵氏の記事
警察が「被害届を受理しなかった」と語った内容掲載
https://note.com/fukadamoet/n/n3a12de3cd1ee