読売新聞「紅麹」捏造報道とは何か

2024年4月、読売新聞大阪本社(以下「読売新聞大阪本社」)が、小林製薬の紅麹(べにこうじ)サプリメント問題を巡る記事において、取引先企業の社長の談話を 捏造 した疑いが発覚しました。

具体的には、2024年4月6日付夕刊「紅麹使用事業者 憤り」と題された記事で、企業社長が「突然、『危険性がある』と言われて驚いた」「補償について小林製薬から明確な連絡はなく、早く説明してほしい」と発言したかのように報じられたものの、当該社長はそのような発言をしていないと抗議を行いました。

これを受けて読売新聞大阪本社は、社会部主任(48歳)を諭旨退職、取材に関わった岡山支局記者(53歳)を記者職から外す職種転換・休職1か月などの懲戒処分を決定しました。

この事件は、単なる訂正報道以上に「報道機関としての信頼性・取材プロセスの瑕疵」が問われる不祥事として注目されています。

捏造発覚までの経緯と責任所在

以下に、主な経緯と責任所在を表にまとめます。

日付 出来事 責任・処分
2024年4月6日 記事掲載:「紅麹使用事業者 憤り」夕刊 記事に談話が“された”と報じられたが、発言は存在せず
2024年4月8日 訂正記事掲載:「確認が不十分でした」 訂正記事も事実と異なる内容だったと指摘
2024年5月1日 読売新聞大阪本社、捏造認定・処分発表 社会部主任を諭旨退職、岡山支局記者を職種転換・休職、編集局幹部処分も実施

社会部主任が「岡山支局からの原稿が自分のイメージと違った」として勝手に書き加え、支局記者も「企業社長が言っていない内容」と分かっていながら修正・削除を求めなかったとされています。また、編集局長や社会部長、社会部次長らも処分を受けたことが報じられています。こうした流れから、「報道現場における上意下達」「記者・支局・本社の役割分担の曖昧さ」「チェック機構の機能不全」という構造的な問題が浮かび上がってきます。

社会的反響と信頼失墜の深刻さ

この捏造事件は、新聞社というメディア機関に対する信頼を根底から揺るがすものとして、業界内外で大きな波紋を呼びました。報道機関である新聞社が「取材先の談話を作成・改変」していた可能性があるという事実は、公共性・透明性・説明責任を担う立場として看過できないものです。

さらに、2025年11月現在になって、SNS(旧 Twitter → X)上でこの事件が再び注目され始め、読者・消費者からは「メディアの責任追及が不十分だ」「取材先(小林製薬/取引先企業)への損害賠償を求めるべきだ」といった投稿が相次いでいます。

報道機関の処分は実施されていますが、信頼回復のためには“形式的な処分”以上に、再発防止の仕組み、透明なプロセス、読者との対話が必要とされています。メディア倫理を巡る問題として、他社へも警鐘を鳴らす事案となりました。

紅麹問題の背景:健康リスクと行政対応

この捏造報道の背景には、紅麹サプリメントを巡る健康リスクや企業・行政対応の混乱があります。小林製薬の紅麹製品を巡っては、健康被害の訴えがあり、製品回収や調査が進められてきました。

読売新聞大阪本社の記事も「紅麹使用事業者 憤り」を見出しにしており、報道される側としても相当なプレッシャーがあったと推察されます。行政・企業・メディアという三者の関係が交錯する中で、取材現場には“迅速さ”と“正確さ”の板挟みがあったと考えられます。

読者としては、こうした“製品安全+報道倫理+企業対応”というクロスオーバーのテーマを理解することが、情報を正確に受け取るうえで非常に重要です。

なぜ「捏造」となったか:大阪本社の構造的問題

捏造を主導したとされる大阪本社社会部主任は、「岡山支局からの原稿が自分のイメージと違った」として勝手に書き加えた旨を説明しています。

この発言から読み取れるのは、支局が取材した原稿が“社会部/本社編集部が期待するトーン”を満たしておらず、強引な修正・談話作成に至ったという報道組織の内部文化です。また、支局記者自身が「企業社長が言っていない内容」と分かっていながら修正・削除を求めなかったという点は、記者の自主性・倫理意識・社内構造のいずれかが欠けていたことを示唆しています。

言い換えれば、「現場取材 → 支局原稿 → 本社編集」という通常の報道フローが“上位部門の意向”によって歪められた可能性が高いのです。こうした構造的危機が、今回の捏造という“結果”を生んだと考えられます。

誤情報に惑わされないためにするべきこと

読者が取るべき行動

  • 一次情報を確認する:記事が引用している公表資料や公式発表(企業、行政、取引先)を確認しましょう。
  • 訂正記事・謝罪文の有無をチェック:報道直後に訂正や謝罪が出ているかを追うことで、媒体の責任感や信頼性の指標になります。
  • 複数のメディアで同テーマを比較する:切り口や論調に違いがあるかを確認し、偏りを読み取る習慣を持ちましょう。
  • メディアの編集・取材体制を意識する:記事を書いた支局・本社、編集部の所在・役割などを意識することで信頼度の評価が可能です。
  • 報道機関に意見を伝える:不適切・疑問を感じる報道に対して、SNSやメールで意見を伝えることで、読者としての主体性を持つことが可能です。

まとめ

「読売新聞 捏造紅麹 大阪本社不祥事」は、新聞社という報道機関の根幹=取材・執筆・編集プロセスにおける深刻な歪みを露呈したものです。読売新聞大阪本社の社会部主任、支局記者、編集局幹部らが処分を受けたとはいえ、信頼回復には時間と制度の改革が必要です。

読者としては、情報を鵜呑みにせず、一次情報・訂正有無・比較読みを通じて“報道を読み解く力”を身につけることが、これからの情報社会で不可欠になります。

参考資料