はじめに
「難民申請者 保護費が4人家族で最大 月額34万8千円」という情報が、SNSなどで大きな話題となっています。物価上昇や家賃高騰が続く中で、難民申請者に対してこれほどの支援が行われているのか、本当に日本人の生活保護より優遇されているのか――こうした疑問や不満の声も少なくありません。
実際、難民申請者の保護費は、生活費・住居費・医療費などを合算した「上限額」として示されることが多く、すべての申請者がこの金額を満額受け取れるわけではありません。また、支給には厳しい条件や審査があり、実際の生活は決して余裕のあるものではないと指摘する声もあります。
一方で、生活保護を受ける日本人世帯と比較した場合、「待遇が同等、あるいはそれ以上ではないか」という意見もあり、社会的な議論を呼んでいます。そこで本記事では、「34万8千円」という数字の根拠や支給内容を詳しく調べ、日本人の生活保護との比較も交えながら、その実態をわかりやすく解説します。
1. 「4人家族で最大34万8千円」は本当?
2024年4月の制度改定により、難民申請者への保護費は物価や家賃の上昇を反映して見直されました。法務省の関連機関によると、「4人家族(夫婦+12歳以上の子ども2人)」のケースでは、生活費と住居費の合計が上限34万8千円程度になるとされています。
この金額は、あくまで「上限額」であり、地域の家賃実勢や家族構成、申請者の状況によって減額される場合もあります。すべての難民申請者がこの金額を受け取るわけではなく、実際の支給額は個々のケースで異なります。
2. 日本の生活保護費と比較すると?
ご提示いただいた2024年4月からの難民申請者への保護費支給額は、日本の一般的な生活保護費の基準額と比べると、全体的に同等か、世帯構成によっては高めの水準に見受けられます。
日本の生活保護費は、生活扶助(生活費)と住宅扶助(家賃上限)などを合算した「最低生活費」として算出され、居住地域(級地制度)や世帯構成によって金額が大きく異なります。
以下の表は、検索可能な最新情報をもとに作成した、生活保護との比較の一例です。地域や加算の有無によって変動するため、あくまで目安としてご参照ください。
世帯構成 | 難民申請者への保護費合計(月額)* | 一般的な生活保護費合計の目安(月額)** | 比較のポイント |
---|---|---|---|
単身者 | 約112,000円 | 約10万円〜13万円前後(地域による) | 概ね同水準。 |
2人世帯(夫婦) | 約194,000円 | 約14万円〜18万円前後(地域による) | 難民申請者の保護費の方が高い水準。 |
3人世帯(夫婦+子1人) | 約271,000円 | 約19万円〜23万円前後(地域による) | 難民申請者の保護費の方が高い水準。 |
4人世帯(夫婦+子2人) | 約348,000円 | 約21万円〜28万円前後(地域による) | 難民申請者の保護費の方が高い水準。 |
*難民申請者の保護費は、生活費と住居費(上限額)の合算です。
**生活保護費の目安には、生活扶助と住宅扶助(上限額)、世帯構成によっては児童養育加算などが含まれる場合があります。
特に注目される点
- 生活費の単価: 難民申請者の生活費は、単身者で約72,000円、2人世帯で約144,000円となっており、世帯人数に比例して増加します。これは、日本の生活保護制度が採用する「逓減制(人数が増えると単価が下がる)」とは異なり、3人以上の世帯では難民申請者の方が手厚く見える要因です。
- 住宅費の上限: 難民申請者の住居費上限は単身者で約40,000円、4人世帯で約60,000円。東京23区の生活保護上限(単身で53,700円)と比べると若干低めですが、地方都市では同等か上回る場合もあります。
- 支給目的と制度の違い: 難民申請者の保護費は、生活保護法とは別の制度に基づき、対象は「難民認定を受けるまでの生活安定」を目的としています。生活保護は日本国民が対象であり、制度の目的が異なるため、単純な比較は注意が必要です。
3. 実際の支給と運用の現状
難民申請者の保護費は上限額であり、実際には地域の物価や家賃水準、申請者の状況により減額されるケースが多いとされています。また、支給には厳しい審査や手続きが必要であり、すべての難民申請者が受給できるわけではありません。
支給までに時間がかかる場合や、支給額が生活実態に見合わないとの声もあり、「上限額=支給額」ではない点には注意が必要です。
4. まとめと今後の展望
「4人家族で月額最大34万8千円」という表現は誤解を招きやすく、実際には生活費と住居費の合算上限であり、支給条件や対象者によって金額は変動します。
ただし、2024年4月の制度改定により、生活保護と比較して「世帯構成によっては同等以上」の支援が行われているのも事実です。物価上昇や家賃高騰の中、制度の見直しが進む一方で、公平性や透明性の確保も求められています。今後も制度の更新情報を確認し、正確な理解に基づいた議論が必要です。