そもそも「ムツゴロウがヒグマを殴る」とはどんな話?

「ムツゴロウがヒグマを殴る」という言葉を聞くと、多くの人は“暴力的な行為”を想像してしまいます。しかし実際は、動物作家の畑正憲さん(通称ムツゴロウ)が、北海道で共に暮らしていたヒグマ「どんべえ」との関わりの中で生じた特殊な出来事でした。

どんべえが発情期に入り、人間に襲いかかる危険な状況となったとき、ムツゴロウさんは瞬間的に拳を振るい「自分が上である」ことを示しました。これは単なる暴力ではなく、命を守るための真剣勝負であり、自然界で親が子を突き放すような「儀式的な意味合い」を持つ行動だったとされています。

改めて「ムツゴロウさん」とは?

ムツゴロウさんこと畑正憲さんは、日本を代表する動物作家であり、動物王国の創設者として知られています。1970〜80年代にはテレビや書籍で、ライオンやクマ、犬や猫などさまざまな動物と触れ合う姿を紹介し、多くの人々を魅了しました。

「ムツゴロウがヒグマを殴る」といった衝撃的なエピソードも広く話題になりました。しかし近年はメディア露出も少なく、若い世代には名前や功績があまり知られていないかもしれません。

2023年に亡くなった後も、動物への深い愛情と挑戦的な姿勢は多くの人々に影響を与え続けています。懐かしさとともに、その生き方は今も動物愛好家や研究者に語り継がれています。

どんべえとは何者か?──愛されたエゾヒグマ

「どんべえ」とは、ムツゴロウさんが北海道で飼育していたエゾヒグマのメスの名前です。エゾヒグマは成獣になると200kgを超える大型動物で、野生では人間にとって脅威となる存在です。

しかし、ムツゴロウさんはどんべえを家族のように愛し、共に暮らしました。その関係は単なる飼育ではなく、信頼関係を築く“共生”でした。どんべえは愛嬌ある存在としてテレビでも紹介され、多くの視聴者に親しまれました。しかし、彼女が成長し、発情期を迎えたとき、事件が起こります。

ムツゴロウが「どんべえ」を棒で殴り殺そうとした!は本当か?

発情期を迎えたヒグマは普段以上に攻撃性が増し、飼い主にさえ襲いかかる危険があります。どんべえも例外ではなく、ムツゴロウさんに向かって牙をむきました。ここで逃げれば人間の命は危険にさらされ、ヒグマとの関係も破綻してしまいます。

ムツゴロウさんは真正面からどんべえを殴り、命を懸けて「自分が上だ」と示しました。この行為は「一線を引くことで共生を続けるための最後の手段」であり、単なる怒りの衝動ではなかったのです。

殴られたどんべえはショックでヒグマ舎の隅に縮こまり、その後涙を流して再びムツゴロウさんのもとに近づいたと伝えられています。そこには深い愛情と信頼が表れていました。

その後のどんべえとの関係と信頼回復

衝突のあと、どんべえはしばらく距離を置いたものの、やがて以前と変わらずムツゴロウさんのもとに戻ってきました。発情期を過ぎたどんべえは再び穏やかさを取り戻し、飼い主との関係は修復されました。

ムツゴロウさんは「涙を流しながら殴った」と後に語っており、この行為が単なる力の誇示ではなく、葛藤を伴う選択だったことがうかがえます。結果的に、二人の絆は揺らぐことなく、むしろ命を懸けて向き合ったからこそ、より深まったとも言われています。

人と動物が共に暮らすには時に厳しさも必要であり、この出来事はその象徴的な例といえるでしょう。

真意を知れば納得?「殴る」は暴力ではなく儀式的しつけ

自然界では、親が子を突き放したり牙を立てたりすることが「子離れ・親離れの儀式」として行われます。ムツゴロウさんの「ムツゴロウがヒグマを殴る」という行動も、この流れに沿ったものでした。

人間の倫理基準だけで捉えると暴力的に見えますが、野生動物の本能と関係を築くという視点からすれば理にかなった行為でした。ムツゴロウさんは暴力を目的としたのではなく、「命を守り、信頼関係を壊さずに暮らすためにどうするべきか」を瞬間的に判断したのです。

これは虐待ではなく、動物と真剣に向き合うための通過儀礼だったと考えられます。

【動画】「ムツゴロウがヒグマをメチャンコ殴る」

「ヒグマを棒で死ぬほど殴る」は現代の目線でどう見るか

今日の動物福祉の視点では、「ムツゴロウがヒグマを殴る」という行為は賛否両論を呼ぶかもしれません。現在では「ポジティブ強化」によるしつけが主流となっており、暴力的な方法は推奨されません。

しかし、1970~80年代にムツゴロウさんが動物王国で挑戦していたのは、未知の動物との共生という実験的な営みでした。彼はライオンに噛まれたときも抵抗せず、脱力して信頼を示すなど、常に命を張った姿勢で動物に接しました。

その生き方は“クレイジー”と評される一方で、“深い愛情の表れ”としても多くの人に感銘を与えました。現代的価値観と比較することで、その真剣さがより鮮明になります。

ちなみに人間が「ヒグマを棒で死ぬほどで殴る」とヒグマは怪我をするのか?

「棒で死ぬほど殴る」と聞くと、ヒグマに深刻な怪我を与えられるように思うかもしれません。しかし、現実はそう単純ではありません。ヒグマは体重200kgを超える巨体と分厚い筋肉、さらに数センチの皮下脂肪に守られています。

人間が木の棒で全力を尽くしても、その力はせいぜい骨に軽いヒビを入れる程度で、致命傷には至りません。もちろん目や鼻といった急所を狙えばダメージは与えられますが、動きを止めるほどの効果はほとんど期待できないのです。実際、野生のヒグマと対峙した場合、棒での攻撃は防御や威嚇の手段に過ぎず、本気で倒すことは不可能に近いといえるでしょう。

クマは殴っても怪我はしないが、クマに殴られると例外なく重症

クマに殴られると、人間は例外なく重症を負います。体重200kgを超えるヒグマの前脚には筋肉と爪が集中しており、一撃で肋骨や頭蓋骨を砕くことも珍しくありません。

さらに体全体の筋力と体重が加わるため、衝撃は拳や棒で受け止められるレベルではなく、内臓損傷や大量出血を引き起こす危険があります。ツキノワグマや小型のクマでも、その力は人間にとって致命的になり得ます。

仮に防御姿勢を取ったとしても、前脚や牙の攻撃を完全に避けることは困難です。現実に、野生でクマに襲われたケースの多くは即重症または命に関わる結果になっており、決して過小評価できません。人間とクマの力の差は圧倒的で、対峙する際は慎重な距離と安全確保が何より重要です。

【動画】クマに殴られた場合の外傷の恐ろしさ

まとめ:「ムツゴロウがヒグマを殴る」が教えてくれるもの

「ムツゴロウがヒグマを殴る」という言葉は衝撃的ですが、真実は“命を守るための信頼の儀式”でした。畑正憲さんは涙を流しながら拳を振るい、どんべえと命を懸けて向き合いました。

その結果、二人の関係は壊れることなく、むしろ深まったと伝えられています。この逸話は「共生とは優しさだけでなく、時に厳しさを伴う」という教訓を示しています。現代の私たちが学ぶべきは、人と動物が互いを尊重し、誠実に向き合う姿勢です。

【おまけ動画】どんべえが全て教えてくれた(ムツゴロウ)

「どんべえ」を「ムツゴロウさん」が語る(動画の内容)

どんべえの時もね、やっぱりそうだったんですよ。

熊と向き合う時には、自分がどんべえになった気分になりたかった。

だって、どうしたらいいのか、どうしたら心が通じるのか、さっぱりわからないんだもん。頑なな気持ちで向き合っても、駄目なんだね。

だから、24時間、ずっと熊になったつもりでいるんですよ。どんべえの生活、どんべえが見ている世界、どんべえが感じていることを、自分の体と心で感じてみるんです。

そうするとね、不思議なもんですよ。動物の体の中に入りたい、って心から思うと、本当にそうなるような気がする。そうやって心を開いてみると、向こうも心を開いてくれる。

それは、ただの真似じゃなくて、愛なんですよ。相手を心から愛そうと思えば、相手の心にスッと入っていける。どんべえとの時間は、そうやって動物と心が通じ合うことの喜びを、私に教えてくれたんです。

などと語りつつ「ムツゴロウさん」はほとんど「どんべえ」のことではなく「アメーバ」の事を語っています。

参考資料(情報元)