
はじめに
退職代行サービス「モームリ」(運営:株式会社アルバトロス)が警視庁の家宅捜索を受けたという報道は、退職代行業界に大きな衝撃を与えました。
累計4万人以上が利用したとされる知名度の高いサービスであったことから、利用者・企業側・同業者にまで動揺が広がっています。
ただし、現時点では “容疑が持たれて家宅捜索が行われた段階” であり、違法行為が確定したわけではありません。
しかし、内部告発や関連情報から“疑われた背景”を読み解くと、退職代行業界が抱える構造的な問題も浮き彫りになります。
本記事では、今回の家宅捜索の疑いのポイント、退職代行業界の合法・違法の線引き、組合スキームの問題点、利用者が注意すべき点を分かりやすく整理します。
01|モームリの家宅捜索はなぜ行われたのか
報道によれば、警視庁は「弁護士法違反(非弁行為)に関する疑い」で家宅捜索に踏み切ったとされています。
(疑い)顧問弁護士へ依頼者を紹介し、見返りを受け取った
弁護士法では、
・弁護士への依頼者あっせん
・報酬の授受(キックバック)
が厳しく禁じられています。
もしこうした構造があった場合、弁護士側にも懲戒の可能性が生じるため、警察が調べる対象になります。
(疑い)民間業者が行ってはいけない“法律事務”に踏み込んだ可能性
民間業者が行ってはいけないとされる業務には以下が含まれます。
・退職日の交渉
・有休消化の調整
・未払残業代などの請求
・法律相談
・損害賠償の交渉
・労使トラブルの調整
こうした“疑い”が積み重なり、家宅捜索につながったと見られます。
02|非弁行為とは?なぜ退職代行で問題になりやすいのか
民間業者ができること
・依頼者の「退職の意思」を会社に伝えること
民間業者ができないこと(非弁行為の疑いとなる行為)
・退職日の交渉
・有休消化の交渉
・未払金の請求交渉
・ハラスメント被害の法的相談
・損害賠償の交渉
・労使トラブルの調整
退職代行は依頼者の要望に応えようとすると交渉に踏み込みやすく、業界全体で“非弁リスク”が常に存在します。
03|労働組合を使った「団体交渉スキーム」とは
近年増えているのが“労働組合型退職代行”。
労働組合には団体交渉権があるため、退職条件の交渉が合法的に行えるメリットがあります。
(疑い)組織の実態が労働組合法の定義を満たしていない
労働組合は「労働者主体の組織」である必要があります。
もし、
・実質的に会社側が運営
・労働者主体ではない
・加入が形式的で実態がない
といった状況であれば、団体交渉権が成立しません。
その結果、「労働組合」を名乗って行った交渉が無効となる可能性があり、依頼者に不利益が生じる恐れがあります。
04|内部から指摘されているその他の問題点
資料にある内部告発では、以下のような指摘も見られました:
・ハラスメント行為の指摘
・情報管理の杜撰さ
・従業員の社会保険未加入
・組織ガバナンスの不備
・公益通報者に対する報復訴訟の疑念
・労務コンプライアンスの軽視
これらは事実認定が進んだわけではありませんが、組織の信頼性に関わる重要なポイントです。
05|モームリ事件の本質
今回の家宅捜索は、単一の問題ではなく複数の構造が重なった結果とみられています。
本質として指摘されているポイント
1. 民間企業が行えない法律事務に踏み込んだ疑い(非弁行為)
2. 労働組合スキームの実態が疑われたこと
3. 弁護士への紹介と見返り(キックバック)疑惑
これらが合わさることで、警察が動く水準に達したと考えられます。
06|利用者はどうすれば安全なのか?
必ずチェックすべきポイント
・運営元が「弁護士事務所」または「実態ある労働組合」か
・依頼前に交渉できる範囲の説明があるか
・追加料金体系が明確か
・個人情報保護体制が整っているか
・法律相談の部分を民間業者が扱っていないか
特に注意すべき点
「安いから」「対応が早いから」だけで選ぶと、トラブル発生時に利用者が不利益を被るリスクがあります。
まとめ
・家宅捜索は“違法確定”ではない
・非弁行為・組合スキーム・弁護士紹介など複数の疑いが積み重なった
・退職代行業界としても大規模なケースで今後の影響は大きい
・利用者は「合法性」「運営主体」を必ず確認することが重要
退職代行の利用者が増える中で、今回の件は業界全体の透明性と健全化が求められる象徴的な出来事と言えます。
参考にした資料
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警視庁が退職代行「モームリ」を家宅捜索、弁護士法違反(非弁行為)の疑い
― 有料あっせんが問題視された背景を報じるニュース -
【弁護士解説】退職代行「モームリ」違法あっせん疑いで家宅捜索
― 合法と違法の境界線について弁護士が解説 -
退職代行モームリ家宅捜索の理由は?弁護士法72条違反(非弁行為)の可能性
― 家宅捜索の目的を整理した記事 -
退職代行サービスと非弁行為問題、モームリ捜査事例と業界の課題
― 業界全体の構造や非弁問題を解説 -
退職代行モームリを巡る告発と実態、家宅捜索に至る背景
― 元従業員の告発や内部トラブルを報じた記事 -
モームリ運営会社・アルバトロスによる家宅捜索についての公式声明
― 捜索を受けた事実と再発防止策に言及










