はじめに

「公務員年金は世界一高い」「国民年金は世界一安い」──SNSやネット掲示板でこんな断定的な言葉を見かけることがあります。果たしてこれは本当なのでしょうか?

結論から言うと、事実とは異なります。過去には公務員年金(共済年金)が優遇されていた時代はありましたが、2015年の制度改正で厚生年金と一元化され、現在は特別に高いわけではありません。一方、国民年金は確かに給付水準が低いものの、「世界一安い」と断定するのは誤りです。

では、なぜこのような誤解が広まったのか? そして、今の日本の年金制度を正しく理解し、自分の老後に備えるためにはどうしたら良いのでしょうか? 以下で詳しく解説します。

結論:「世界一高い」「世界一安い」は事実ではない

「世界一高い」「世界一安い」という言葉はキャッチーですが、国際比較を含めると根拠に乏しいことが分かります。

まず、公務員年金はかつて共済年金として運用されており、職域加算という独自の上乗せがあったため「優遇」と見られていました。しかし2015年の一元化で、厚生年金に統合され、この上乗せ制度は廃止されています。現在は保険料率や給付水準の面で、民間の厚生年金とほぼ同じ仕組みです。

一方、国民年金は定額保険料で誰でも加入できる制度で、満額でも年間およそ83万円(月額約69,000円)です。この金額は諸外国と比較して低い水準ですが、「世界一安い」という断定はデータ上確認できません。

公務員年金が「高い」と言われる理由とその真実

公務員年金が高いと誤解される背景には、過去の制度と現状の違いを理解していない情報拡散があります。以下の表で簡単にまとめます。

項目 旧制度(共済年金時代) 現在(厚生年金一元化後)
適用対象 国家公務員・地方公務員 同上(厚生年金に統合)
職域加算 あり(上乗せ給付) 廃止
保険料率 民間より低め 厚生年金と同率(18.3%)

このように、現在は厚生年金と同一制度になっており、共済年金としての優遇は存在しません。にもかかわらず「公務員だけ得している」という誤解が続くのは、過去の記憶やメディアの表現が影響していると考えられます。

国際比較で見る日本の年金水準

世界各国の公的年金は、制度の仕組みや給付の考え方が異なるため、単純比較はできません。しかし参考までに、OECDの指標「所得代替率(現役時の収入に対して年金がどれだけ保障されるか)」で見ると、日本は約40%前後で、主要国の中では低い水準です。

一方、公務員年金(現在の厚生年金に統合)はドイツやフランスの公務員向け年金よりも給付率が低いことが分かっています。つまり、「世界一高い」という根拠はありません。

日本の所得代替率(OECD基準)

  • 平均:約40%
  • ドイツ:約50〜60%
  • フランス:約70%

結論:日本はむしろ低めであり、「世界一高い」という指摘は誤解です。

あなたがこれからするべきこと

「世界一高い」「世界一安い」という情報は、老後資金の準備を考える上で混乱を招きます。重要なのは、事実を理解し、自分で備えることです。以下の3つのステップを実践してください。

  1. 年金見込み額を確認する
    ねんきんネット公式サイトを使って、自分の将来の受給額を確認しましょう。
  2. 私的年金制度を活用する
    iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、つみたてNISAなどを検討し、老後資金の積み立てを始めましょう。税制優遇も受けられます。
  3. 生活設計を見直す
    老後資金は年金だけに頼らず、投資・貯蓄・副収入を組み合わせることが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 公務員だけ年金が特別に高いのですか?

→ いいえ。2015年の制度改正で厚生年金と一元化され、特別な上乗せはありません。

Q2. 国民年金の満額はいくらですか?

→ 2025年度時点で月額約69,308円、年間で約83万円です。

Q3. 「世界一高い」「世界一安い」というのはどこから?

→ 過去の制度や誤解に基づく言説です。国際比較でも日本は決して世界一高いわけではありません。

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