はじめに

「非正規滞在」と「不法滞在」は、似たような場面で使われる言葉ですが、実は法律的にも社会的な意味合いにも違いがあります。本記事では、これらの用語の違いや使われ方、そして今後の対応についてわかりやすく解説します。誤った認識に基づくリスクや社会的な誤解を避けるためにも、正しい知識を身につけましょう。

非正規滞在とは?不法滞在との違いを定義で解説

「非正規滞在」とは、正式な在留資格を持たずに日本に滞在している状態を指し、主に行政上の違反行為として扱われます。一方で「不法滞在」は、法的手続きを経ずに入国または滞在を継続している状態全般を指し、こちらはより広い意味を持ちます。

用語 意味と背景
非正規滞在 在留資格が切れた、または取得せずに滞在している状態(行政違反)
不法滞在 不法入国や在留期間を過ぎたまま滞在している状態(行政または刑事処分対象)
不法残留 一定の在留資格を持って入国後、期限を過ぎて滞在していること

非正規滞在は「行政処分」の対象であり刑事罰ではありませんが、不法滞在に含まれる行為によっては退去強制や再入国禁止措置が取られることもあります。

現在の不法残留の実態|数字で見る状況

2024年の法務省データによると、日本における不法残留者数は約77,935人。前年同時期よりやや減少しているものの、依然として高水準で推移しています。

国別上位の不法残留者(2024年1月時点)

順位 国籍 人数
1 韓国 10,710人
2 ベトナム 9,284人
3 タイ 6,648人
4 中国 6,222人
5 フィリピン 5,104人

この中には、技能実習制度や短期滞在から滞在資格が失効したまま日本に留まっている人も多く含まれます。

なぜ「非正規滞在」という言葉が使われるのか

「不法滞在」は、その響きから「犯罪者」と誤認されやすく、社会的な偏見を助長するおそれがあります。そのため、近年では人権尊重や差別防止の観点から、メディアや人権団体が「非正規滞在」や「無登録移民」といった表現を使うようになってきています。

国連や国際労働機関(ILO)も、「illegal immigrant(不法移民)」という表現の使用を避けるよう推奨しており、日本でも「非正規滞在」への言い換えが進んでいます。

非正規滞在・不法滞在になったときにするべきこと

非正規滞在状態になってしまった場合、放置すれば退去強制や再入国禁止など重大なリスクに直面します。しかし、状況によっては合法的に日本に滞在し続けられる可能性もあります。

状況別の対応策

状況 するべきこと
在留期間が過ぎてしまった 速やかに入国管理局へ出頭し、相談する。仮放免や特別許可の可能性を確認。
家族が日本にいる場合 日本人配偶者や子どもがいる場合、在留特別許可や家族滞在ビザの申請を検討。
難民の可能性がある 難民認定申請を行う。ただし、日本は難民認定率が低いため、事前に専門家相談が推奨される。
労働目的での滞在 不法就労になっている可能性があるため、合法化の可否を専門家に確認。

いずれの場合も、専門の行政書士や弁護士と連携し、手続きを適切に進めることが重要です。独断で動くと逆に状況を悪化させる恐れもあります。

よくある誤解と正しい理解Q&A

Q. 非正規滞在は犯罪行為ですか?
A. 刑事罰ではなく行政処分の対象です。退去強制が主な対応措置です。

Q. 不法滞在と不法入国は同じですか?
A. 違います。不法入国は許可なく入国する行為、不法滞在は滞在期間を超過した状態です。

Q. 不法滞在でも合法にできる方法はありますか?
A. 状況次第で在留特別許可や仮放免が認められることがありますが、専門家との相談が不可欠です。

まとめ

  • 「非正規滞在」は資格のない滞在を示し、行政上の違反。
  • 「不法滞在」は非正規滞在を含むより広義の表現で、刑事罰対象となる場合もある。
  • 誤った認識が差別や不利益につながる可能性があるため、正確な知識を持つことが重要。
  • 状況によっては合法的な手段で在留継続が可能なので、専門家への相談が第一歩。

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